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今年の春、ある入居者さん(要介護5の方)が「結婚式に出席したい」と希望されました。様々な工夫と準備が必要でしたが、無事出席することができました。今もその時の表情や、感謝の言葉が忘れられません。
この経験がきっかけになり「ご本人が望むことをできる限り実現する」ことを目標に、サンライフの事業計画に「QOL向上」が掲げられました。
すると早速、先月末にある方のQOL向上企画が会議にかけられ、望んでおられたご実家にお連れすることになりました。
その方はここ1年ほどメンタル(認知)面で様々な支障が出始め、特に2~3ヶ月はご本人も苦しまれている状態でした。ご実家には事前にお願いした知人(ご本人がとても慕っていた方)に来ていただきました。普段の会話にも支障が出始めていましたが、車が実家に近づくにつれ「ここは〇〇さんのお家」「ここは昔からある〇〇」などとはっきりとした口調に変わられ、知人に再会した時などは、涙ながらにしっかりした挨拶をされていました。たまたまお隣さんが偶然気づかれ、「よく帰ってこられて」と握手し、ここでも嬉しい涙があふれていました。この瞬間は以前の元気な状態に戻られ、医学や科学では説明できないとつくづく感じました。
数日たった今も、写真を見ると思い出されています。また、ご家族に報告すると、「これだけ元気になるのなら」とお孫さんを交えた里帰りを企画してくれることになりました。QOL(生活の質)を真剣に考えることが、リハビリテーションの大きな柱だと実感した出来事です。



初夏の昼下がり、武生高校のみなさんがお琴演奏会を開いてくれました。
総勢12名の武高生がそれぞれの琴を食堂に並べ、多くの曲を演奏してくれました。12台の琴が並ぶ食堂の画は壮観です。独特の音色ですが親しみやすいメロディで、思わず口ずさんだり、身体や手が自然と動いている方もいました。
もちろん後藤先生や顧問の先生の指導が素晴らしいんだと思いますが、若い生徒さんたちなのに演奏のレベルはとても高かったと思います。最後の曲などは、12台の琴が同じ琴線を奏で、感動的で拍手が鳴りやみませんでした。
そしてもうひとつ。この企画は、サンライフの入居者であるAさんがお琴を後藤先生に習っていることから毎年続けてきたのですが、Aさんが他県(娘さんのところ)へ引っ越してしまうため、そのお別れパーティでもありました。垂れ幕には「元気でね」と書かれ、最後の演奏をしたあとはお別れの手紙を朗読してくれました。
Aさんが入居して5年。いつも居室から琴の音色聞こえてきて、施設全体を良い雰囲気にしてくれました。施設長からは「最後の演奏は、今までで一番良かった」と感想がありましたが、心のこもった演奏だったと思います。武生高校や後藤先生との縁はAさんのおかげです。最後に、親戚の子から花束を受け取り、みんなでお別れの拍手を受けていました。遠い県外に行ってしまうのはさみしいですが、最後に素晴らしい思い出を残してくれて感謝でいっぱいです。向こうでも琴を続けてください。
武生高校のみなさん、顧問の先生、後藤先生、そしてAさん素晴らしいひと時をありがとうございました。
今月の勉強会は管理栄養士Nさんによる「食事介助」について。
そういえば先日、NHKの『プロフェッショナル』で経口摂取にチャレンジし続ける看護師さんの挑戦が放送されましたね。「食べる」意欲を引き出すために専門的な評価やリハビリテーションを続けること、そしてあきらめず支援するキモチさえあれば必ず「食べる」ことができる…という内容でした。とても共感できる番組でした。
今回の発表したNさんは管理栄養士、調理師の立場から食事介助について取り組んだことをまとめたものでした。介護職の一つの気づきを活かした事例で、ソフト食の形態を見直し、摂取量増につながった経験と、最近参加した「高齢者の食事介助」の研修で得た知識とをあわせた講義をしてくれました。
みんな興味のある内容だったのか、時間になると研修会場はいっぱい。医師、看護師、介護職はじめ多くのスタッフが実際に介助しあってみたり、ソフト粥の形態(改善前と改善後)を試食してみたりしました。咀嚼しやすい介助方法や飲み込む力を体験し、良い感想がたくさん挙がってきました。
最後に施設長から「この発表は外の研究発表で十分通用する、とてもまとまっていてわかりやすい良い発表でした」と高評価をいただきました。
Nさんはじめ厨房のみなさんの知識や技術、キモチはきっと利用者さんの「食べる」意欲を引き出してくれるでしょう。Nさんおつかれさまでした。



施設に入居されているTさんが主宰する水墨画展が「ギャラリーしくら」で行われました。
毎年多くの生徒さんと展示会を開催されていましたが、昨年末、脳梗塞から重い麻痺が残り治療やリハビリで大変な時期を過ごされ「今年の展示会はいけないかもしれない」と半ばあきらめていたそうです。しかし、ご本人やご家族の努力の甲斐あって、無事退院され、展示会初日に顔を出すことができました。
会場に入ると多くの生徒さんから「先生」と呼ばれ、闘病やリハビリの大変さをねぎらわれていました。照れくさそうにしながら作品を眺めるご本人の姿がとても印象的でした。
左半身の麻痺は重く、今後もさまざまな支障が予想されますが、ご本人は「来年の展示会に作品が出せたら」と前向きな目標を語っておられました。本当につらく厳しい現実があるなか、あきらめず挑戦しようとする姿勢に胸を打たれます。これから多職種で、できる限りのサポートをしていきたいと思いました。